PULL KEY, WAIT 10 SECONDS

C5 Corvetteには電動のステアリング・ロックが装備されています。鍵を抜くとハンドルが回らなくなるロックのことです。日本ではハンドル・ロックと言う方が判りやすいかもしれません。アメリカではコラム・ロック(Column Lock)と言います。
一般的なクルマは機械式ですが、C5のそれは何故か電動アクチュエータを用いています。これがC5では定番の故障箇所で、GMは複数回のリコールや無償修理を行っていますが、最終的に解決には至りませんでした。

私のZ06もアメリカ在住時にGMでリコール修理を受けています。これまで、あまり気にしていなかったのですが、数ヶ月くらい前からコラム・ロックのアクチュエータの動作音に元気がなくなっていたのが気になっていました。
そして今日、ついに

“PULL KEY, WAIT 10 SECONDS”

のエラーメッセージが出ました。幸いにして、指示通りにしたらエラーメッセージは消えたのですが、このメッセージはコラム・ロックにトラブルが出る予兆として知られています。そして、このメッセージが
”SERVICE COLUMN LOCK”
になったらアウト。エンジンは始動しますが、ちょっとでも動かすと燃料カットによってエンジンが止まるようになっています。ほとんどの場合、ハンドルもロックされたままです。
これは、数ある盗難防止装置の一つですが、どうも信頼性が低く、C5の1%にこのトラブルが発生すると言われています。

このトラブルの対処方法ですが、一般的にはコラム・ロック・シミュレータ(CLS:Column Lock Simulator)とか、コラム・ロック・バイパス・モジュール(CLB:Column Lock Bypass module)と呼ばれるデバイスを取り付けます。

コラム・ロックが解除されないトラブルが起きる前に、私もCLSを取り付けることにして、部品を発注しました。ネットを検索すると複数の製品が見つかりますが、今回、私が選んだのは、Compliance Parts社LMC5 Moduleというもの。
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これの説明は、上記の会社のwebサイトを見てもらうとして、これがどういう動作をするものかを、解説しましょう。
C5のコラム・ロックの回路は、こうなっています。(クリックすると拡大されます)
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BCMからコラム・ロック/アンロックの指令電流が出ます。ロックとアンロックは、アクチュエータに印加する電流を正逆するだけです。同時にBCMからコラム・ロック・リレーをON/OFFする指令が出ます。このリレーがONになっている間、アクチュエータにロック/アンロックの電流が流れて、アクチュエータが動作します。同時にアクチュエータは、コラムロックの状態をBCMに返します。
”PULL KEY, WAIT 10 SECONDS”や”SERVICE COLUMN LOCK”は、BCMがコラム・ロック・リレーをONしたのに、コラムロックのステータスが正しく変化しなかった場合に表示されます。
CLBやCLSは、BCMの指令を横取りして、アクチュエータに流さずに、嘘のステータスをBCMに返す事をします。BCM側から見ると、コラム・ロックが正常に動作しているように見えますが、実際にはコラム・ロック・アクチュエータは動いていないのです。

これが理解できれば、理工学系の人ならば簡単にCLBの回路が思いつくでしょう。実際、自作方法を公開している人もいます。
http://shelor.net/Z/CorvetteForum/Cscokd/CLB.pdf

市販されているCLS(CLB)のほとんどは、コラム・ロック・リレーとアクチュエータの間に入れるのですが、私が注文したLMC5はBCMとコラム・ロック・リレーの間に入れるタイプです。このタイプだと、コラム・ロック・リレーが不要になります。
コラム・ロックの故障モードの一つにリレーの焼損があります。LMC5以外のCLS(CLB)はコラム・ロック・リレーの出力を使うので、リレーの焼損には対処できません。LMC5はリレーの焼損にも対応する一方で、BCMのコネクタを分解するという作業になるので、自動車の電子機器について、まったく未経験である場合には、少しだけ敷居が高くなります。でも、パソコンのケースを開けて、内蔵HDDの交換ができるくらいのスキルがあれば問題ないレベルです。

さて、LMC5はアメリカに発注したので、届くまでに10日程度はかかると思います。
先ほどガレージで、コラム・ロックの動作をチェックしたのですが、最初の1回目にアクチュエータの音が苦しそうですが、2回目以降は元気な音になるので、多分、すぐに動かなくなることはないと思います。
10日間というと、ダムサンデーSportとタワー・ミーティングの2回なので、多分、大丈夫でしょう。