[550] 高速タペット調整

ダムサンデーの行き帰り、なんとなくタペット音が大きい気がしていたので、調整しました。設定値は50μm。整備書の値よりもかなり小さいですが、このエンジンの場合は、これで問題ありません。なんでもかんでも整備書通りにすればいいというわけではないのです。こういうところが、腕というわけですね。
調べたところ、実際に1番の吸気バルブのクリアランスが少し大きくなっていました。他は問題なし。これを調整して試走。タペット音はかなり静かになりました。
160604-01

ところで、ミーティングでお会いした方が、
「カムが見えなくてタペット調整ができない」
と言っていたのですが、タペット調整をするために、カムを見る必要はありません。
また、整備の教科書には、
「タペット調整をする気筒を圧縮上死点にする」
と書かれていますが、そんなことをする必要もありません。以前にも一度書きましたが、レースメカニックの間では常識になっている高速タペット調整の方法を伝授しましょう。この方法を使えば、クランクを回すのは最初にTDCに合わせるのと、もう一周させるための、たったの2回で済みます。

前提として、4気筒。点火順は1-4-3-2とします。原理がわかれば、他の気筒数、他の点火順序でも同様の手法が使えることがわかるはず。

まず、クランクプーリーのマークをTDC(Top Dead Center:上死点)に合わせます。これで、1番と3番が上死点になりました。圧縮上死点になっているのが1番なのか3番なのかは、ロッカーアームを見ればわかります。どちらが圧縮上死点でも構いません。

ここでは仮に1番が圧縮上死点になっていたとします。
このとき、各気筒の状態は
1番 圧縮上死点
2番 排気工程開始の下死点
3番 吸気工程開始の上死点
4番 圧縮工程開始の下死点
となります。したがって、タペット調整が可能なのは、
   吸 排
1番 〇 〇
2番 〇 ×
3番 × ×
4番 × 〇
一気に4つのバルブが調整可能なわけです。
(〇が調整可能、×が調整不可能。一応、等幅フォントの指定をしていますが、ブラウザによって表示が崩れているかもしれません。)

つぎに、クランクを360°回すと、今度は3番が圧縮上死点になります。
したがって、タペット調整が可能になるのは、さっきの逆。
   吸 排
1番 × ×
2番 × 〇
3番 〇 〇
4番 〇 ×
となり、これで全部のタペット調整が終わりました。

要するに、4サイクルエンジンの場合、バルブが開いているのは1サイクルだけで、あとの3サイクルはバルブが閉じているのです。タペット調整は圧縮上死点でする必要はなく、バルブが閉じている状態であれば良いので、このように各気筒がどのサイクルにいるのかを考えれば、いちいち圧縮上死点にする必要はないというわけ。